今朝は楽しかった。
6時頃にゴミ出しをして、寒さのあまり布団にもどってそのまま
二度寝したら、まどろみのなかで夢を見はじめ、そして、
その夢のなかで「いま、夢を見てる状態だ」と気がついたのだ。
私はお洒落をして部屋から出掛けようとしているんだけど、
玄関の靴箱をいくらあさっても右の靴しか見つからない。
ブーツもスリッポンもヒールパンプスも、出てくるのはすべて右。
困って、靴の右側だけ何足も抱えて裸足で玄関のドアを開けた。
と、そこはなぜか高層タワーの最上階の部屋になっており、
目の前に広がる大きな窓の向こうには、六本木ヒルズの森ビル、
東京タワー。しかもそれらを見降ろす高さにいる。
ここで「あ、いま、夢のなかにいる」と気がついた。
同時に「よっしゃラッキーーーーーーーッ!!!」
たいてい、夢だと気がつくと、急速に覚醒して目を開けてしまう。
せっかく安楽の夢の世界にいたのに、しーんとしたいつもの自分の
部屋の風景に引き戻された瞬間は、なんとも残念な気分になるものだ…。
部屋の風景に引き戻された瞬間は、なんとも残念な気分になるものだ…。
この時も、窓の向こうの空に、巨大な黒いファスナーの線が見えた。
自分のまぶたの線だ。
これが上下に開くと、たちまち夢の世界は“夢”と消えてしまう。
ファスナーから意識を反らし、なるべくファンタジーを想像する。
想像したことはそのまま景色となって現れて、自由に遊ぶことが
できるのだ。
まず、抱えていた右だけの靴をぜんぶ猫に変えてみた。
黒猫、茶猫、白黒猫、赤猫。金色のラメの猫。
うまくいきそうだ。
それから、部屋のなかで試しにポンとジャンプしてみた。
軽々身体が浮き上がって天井に両手をぴったりつけていられる。
空を飛べると確信したので、窓を開けてベランダの柵をよじのぼった。
けっこう風が強くて寒い。
「やばい、やっぱり現実かも!?」
でもまあこんな高い所から落ちることも二度とないからいいやと思って、
東京タワーより高い空へダイブした。
気持ちええーーーーーーーー!!
一瞬まっさかさまに落ちたけど、うまく上昇して自由に飛ぶことができた。
でも、大都会の風景なんか見降ろしても汚らしくてたいして楽しくないし、
そしてここが私の想像力の愉快さなんだけど、そもそも強風のあまり、
さっきから着てる服がバッサバッサめくれ上がって、可憐なおっぱいが
丸出しになっている。
丸出しになっている。
それで、実家の三重県の落ち着いた景色にスライドさせた。
近所の長いブロック塀の上やら、幼馴染みの家の屋根、港の灯台、
学校の屋上やらを落ち着いて飛び渡って遊んだ。
建物の窓が開いていれば、中に入ってみた。
生活感はそこかしこにあるし、ある家の台所には炊飯器の湯気が
充満しており、食卓に朝食の準備がなされていたりもするんだけど、
どこに行っても誰とも出会わない。
ふと、思った。
あっ、私、死んでるかも?
やっぱりさっきの高層タワーからのダイブ、現実だったのかも。
やっばー! ファスナーどこ? 空のファスナー!
上空へ、昇る、昇る、昇る!
ファスナーあった! 両手で掴んで上下にひっぱる! か、かたい!
おい、あたし、寝すぎなんだよっ!
なにくそ、隙間に頭をつっこむ!ぐおおお、めちゃくちゃ狭い! 狭すぎて息が詰まる! 死ぬーっ!
でもこの世界から出ないと! ぬおおおお、頭蓋骨がゆがむーっ!
な、なんか、でも、この強烈な狭さ、昔、どこかで体験した気がする…
これって、あたし、産まれ変わってるんじゃなあい?? ああああーっ!!
ごっふぁ!!
とても殿方には聞かせられない音声を立てて目を覚ますと、
私は、敷布団と枕の間に顔を挟んでもがいていたのでした。
やれやれ、驚いた。
楽しかったな。でもあたし、ホントに死んでたんじゃないか?